マーケティング3.0
マーケティング3.0とは
顧客のセグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングを説くSTP理論や、マーケティングの4Pにpeople・processes・physical evidenceを加えた7P理論などを唱え、アメリカの現代マーケティングの第一人者として知られるフィリップ・コトラーが、近年提唱した新しいマーケティング概念として提唱したのがこの「マーケティング3.0」である。
とは言えこの理論は、一時期話題となった「Web2.0」と同じように、言葉だけが独り歩きをしており、実態を把握しづらい。従来の理論と比べると、理想論的な概念であり、現実的ではないという批判もあるが、今後のマーケティングの将来像を予想する上で、重要な指摘が含まれている。そのためマーケティングにかかわる人は、知っておいて損のない概念であるといえるだろう。
マーケティング3.0では、「マーケティング以前」の時期からマーケティング1.0~3.0に分けて時代が進むとしている。
マーケティング以前
マーケティング以前は、独占的な供給であるとしている。製品の製造が需要よりはるかに少なく、全員のニーズを満たすことはできない。そのためマーケティングは不要であり、より高い価値を付けた人に優先的な供給を行う社会である。
マーケティング1.0
この時期は製品中心の時期と言えるだろう。供給側に競合が生じ、競争が生まれたことにより、企業が生産や販売に効率を求め始めることになる。いわばマーケティングの始まりだ。しかしまだまだ需要に対して供給が追い付いておらず、良いものを作れば売れる、という段階であるため、製品(Product)を改良し、適性価値(Price)を検討し、販売場所や流通(Place)を効率化し、販売文句(Promotion)というマーケティングミクスの4Pがこの時期の代表的なマーケティング理論と言えるだろう。
マーケティング2.0
供給側の効率化により、供給量が増大し、需要を上回り製品があふれた時期がマーケティング2.0である。そうなると製造側にさらなる工夫が必要になるのは当然だ。今まで以上に競合を強く意識しはじめ、彼らよりいかに優位にたつかを工夫が必要となる。
利用者の土器の使い方を分析(Segmanetation)し、競合との棲み分け(Targeting)を検討し、その中で独自性を出す工夫(Positioning)が行われるようになった。これがマーケティング2.0時代の象徴、STPだ。
こうしたマーケティング競争激化の結果、より継続的に顧客を囲い込むことが重要となり、継続的に買ってもらう価値(Life Time Value)が重視される。これはCRM(Customer Relationship Management)の理論であり、このような変遷によりマーケティングの中心はより「顧客中心」となっていく。
マーケティング3.0
マーケティング2.0の時期は、競争過多であり、その結果過剰な宣伝文句に走ったり、品質をごまかして低価格にしたりするなど、偽りの商売をするところも出てきてしまう。そのため消費者は情報交換を行い、だまされたりしないようになってくる。さらに価格や品質についても広くクチコミされるようになり、利用者のほうが強い立場、つまりは消費サイドがリードする時代となる。それがマーケティング3.0の時期である。この段階に入ると、質が悪い、高すぎるなど利用者に受け入れられない作り手はすぐに噂になり淘汰されることとなる。
この時期でポイントとなるのが、顧客中心の考え方の徹底であり、自社の都合より利用者、さらには社会にとってプラスになることを第一に考えることが求められる。そのため商品やサービスの開発でも、顧客の声を積極的に取り入れるとともに、修理や配送などのサービスに力を入れなければならない。
また顧客第一を徹底するためには、一律のサービスではなく、一人ひとりのニーズやコンテクスト(背景や事情)を把握し、利用者に喜んでもらうこと、つまりは顧客の満足や感動を目先の売り上げより重視することが求められる。さらには社会全体のプラスとなるよう、顧客と力を合わせてCSRを積極的に推進し、貢献活動を行わなければならない時期としている。
発展段階に合わせたマーケティング
このようにコトラーは、マーケティングを、独占的な供給、製品中心、顧客中心、そして3.0の時代になって人間中心、利用者がパートナーになる時代と定義した。この背景にあるのはIT技術の発展であり、SNSなどのソーシャルメディアとの関連性が非常に強いことは否定できない。
しかしこの変化は、インターネットだけによって引き起こされていると錯覚されがちだが、実はネットによる表面上の変化だけでなく、様々な根本的なパラダイムシフトが現在起こっている、ということを指摘している点を踏まえなければ、マーケティング3.0を正確に理解することはできないだろう。
なぜならこのマーケティング発展の概念は、社会全体のことだけではなく、一つひとつ狭い分野に対してもいえるからである。革新的な製品が発売された段階では、独占的な供給が行われ、ついで同様の製品が他社で開発され、製造技術などが陳腐化されることで顧客中心に移行し、人間中心のものへと成熟していく。この発展構造はITとは関係なく起こるのである。商品などのライフサイクル(製品が販売開始されてから販売終了にいたるまで導入期、成長期、成熟期、衰退期の段階)を社会全体のマーケティングに置き換えたものと言えるからだ。
つまりは近い将来におけるマーケティングが目指すべき方向性として提唱された概念としてとらえるべきだろう。

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