- 爲廣
使いやすさの代表で言うとやっぱりAppleでしょうか?3~4年前にボクが初めてipodナノを買ったとき、最初の5分は「不親切なデザイン!」と思いましたが、その後10分ほどで説明書をちょっと見てからは、すごいデザイン、すごいユーザビリティ、とほんの10分ほどで考えが大きく変わっていましたから。まさにシンプルの力ですね。その後、3~4回も買い換えていますから、自然にファンになってる。
- 棚橋
Appleのモノづくりはその通りだと思いますよ。隠すものと、見せておくものの切り分けがきちんと設計されているわけですね。はじめシンプルすぎて解りにくいけど、使い慣れてくるととても使いやすい。
日本の設計の仕方ははじめの使いやすさとか、わかりやすさを求めますからね。慣れると要らないものがいっぱいになってしまうわけです。初めて使う人を想定して設計するのか、継続して使う人を想定して設計するのか、の違いですね。どちらが使いやすいかというと、継続して使えるのはやっぱりシンプルなほうです。必要な機能に絞り込み、隠すものは隠して、用途に合った必要なものがきちんと配置されていることが使いやすいのですよね。Webサイトも同じことが言えると思いますね。
Appleは「人間中心」ということをずっと昔から言ってますよ。
- 爲廣
2005年ごろからのブログ、その後のSNS、そしてYouTubeやニコ動、今はTwitterが旬で、人と人のつながり方の旬がどんどん進化して、コミュニケーションの仕方がどんどん変わってきていますよね。人と人のつながり方が変化していくという事が、多様化を象徴していますよね。
- 棚橋
変わってきていますよね。
人それぞれバラバラにつながっていて、昔みたいに一律ではなかなかくくれない。
- 爲廣
みんなの「幸せの価値観」が変わったということなんでしょうね。だから「時代の転換点だ」と言われている。モノを持っていても別に幸せじゃない。価値観が変わってしまって、モノではなくてプロセスが大事になった。
モノは余っているので、価値が下がってしまって、持つことが幸せではなくて、モノを持つためのプロセスで、幸せになったり、ならなかったりする。プロセスが大事にされる時代なのですよね。
ボクは勝手に、10代の携帯世代、20代の草食男子・強い女性世代、30代の両極端世代、40代のバブル経験世代、50代の所有が幸せ世代、60代団塊元気世代、とか勝手につけて楽しんでいる感があるのですけど、確かに多様化していますよね。ペルソナに聞きながら、モノづくりも、Webサイトづくりもしていかないと、一昔前のように一律というわけにはいかないですよね?
- 棚橋
そうでしょうね。そういう意味ではペルソナの重要性はますます高まるでしょう。
人々が多様化したのだから、目指すべきターゲットユーザーにちゃんとフォーカスしたサービスなりものづくりを提供していくことが大事です。誰がいつ、どんなときに使うのか、モノづくりでも、Webサイトづくりでもいっしょですよ。ターゲットユーザーのことをきちんと理解しないと、何も作れなくなりますよ。
- 爲廣
でも、ターゲットにフォーカスしたデザイン、ってまだまだ行き渡っていないですよね?
- 棚橋
まだまだ、行き渡っていないですよ。
- 爲廣
ユーザーテストやペルソナって言ったところで、まだまだ皆さんあまりご存知ないですものね。
- 棚橋
これからは当たり前になると思うのですよね。ぜんぜん特別の手法じゃない。ユーザーのことを知らないでデザインなんてできませんから。どう作ったらいいかなんて、わからないわけですから。
ボクなんかは基本的にお客さんありきでお客さんとコミュニケーションしながら仕事をしているので、逆にユーザーのこと知らないで、よく作れるな~、って感じますね。
これまでのように、新しいもの、今までなかったものを作っていた時代は、「みんな同じように使ってくださいね」でいいわけです。例えばパソコンだと、ノートパソコン、デスクトップパソコン、PDA、モバイル型、・・・いろいろ揃えてあります、あなたどれにしますか?で売れたわけです。時代はかわっちゃいましたから。学習済みの賢いユーザーで多様化した人たちにそれでは受け入れてもらえません。
ユーザーを知ることはかつてないほど、重要性を持ってくるでしょうね。
- 爲廣
その通りですよね、ありがとうございました。
ちょっとテーマから外れますが、これからの「Web制作」ってどうなっていくと思いますか?「デザインしますよ」「設計しますよ」という広告制作っぽいモデルってなくなっていくと思っているのですけど。危機感を感じていて。
- 棚橋
日本のWeb制作会社は出版という観点からスタートしていると思っていて、企業側はWeb制作のほとんどすべてを外注してきたわけです(広告制作、と同じ発想ですね)。ところが、プロダクトデザインっていうのは、基本部分はクライアントの社内でつくるじゃないですか?外に出さないのですよね。そこが面白い、と思っています。
今後、Webサイトを「作る」という部分においてはcmsの普及をみても明らかなように内省化されていくでしょう。そういう意味ではある部分ではWebの制作は減っていくと思いますよ。ところが、逆にWebを活用したサービス提供、はこれからどんどん広がるだろうから、「制作やデザインだけではなく、そこに関わって成功させるスキルのある制作会社が伸びていくだろう」と思います。Webサイトをデザインするのではなく、Webサイトを使う人の生活を含めてその全体的なシステムをデザインするという発想が大事になってきます。それがWebサービスというビジネスの成功の前提になる。「ペルソナ」もWebサービスを成功させる一つのとても大事なファクターだと思いますよ。
どちらにしても「Web制作」という守備範囲が、単に「デザイン」ということではなくなってしまうでしょうね。ヨーロッパだとcmsの普及は日本よりもっと進んでいて、日本の手作業の多い制作環境を見て「日本ってそんなに人件費安いの!?」ってボクの友達が言われたそうですよ。(笑)
- 爲廣
楽しくて、参考になるお話が聞けて有意義な時間がすごせました。
棚橋さん、今日はどうもありがとうございました。
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- 棚橋 弘季
- 株式会社コプロシステム 商品計画研究所 シニアコンサルタント
ユーザー調査、ペルソナ/シナリオ作成、ユーザーテストなどを通じたクライアント企業の人間中心のデザインを支援している。
情報デザインフォーラム・メンバー、ユニバーサル コミュニケーション デザイン協会会員。
著書に『ペルソナ作って、それからどうするの?』(ソフトバンククリエイティブ)、『ひらめきを計画的に生み出すデザイン思考の仕事術』(日本実業出版社)。共著に『マーケティング2.0』(翔泳社)。
個人ブログはDESIGN IT! w/LOVE(http://gitanez.seesaa.net/)。
TAMでは、「ユーザーのことを知らないで、Webサイトはつくれない」を当然と考え、今後ペルソナ・シナリオやユーザーテストがどんどん身近に必要なものになっていくと予測しています。クライアントが自ら実施する部分とTAMのようなプロがお手伝いする部分を区分けしていく必要性を感じています。
そういう想いで「ペルソナ・ラボ(ペルソナとユーザーテストをもっと活用しよう!)」が間もなくオープンします!



