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Webサイト制作における、定量調査と定性調査とUX/UI

Webサイト制作における、定量調査と定性調査とUX/UI

Webで受託のお仕事をしているとサービスデザインを一からすることはあまりありませんが、それでも「UX」や「UI」が叫ばれて久しい昨今、サイト構成や画面設計において「UX的にどうなん?」のような言葉が飛び交うことがよくあります。

「UX」自体は「ユーザー体験」として「要はモノより体験が大切なんでしょ?」という漠然とした共通理解は様々なミーティングの場でも感じられますが、定量的な視点と定性的な視点がごっちゃになって議論が的を得ていなかったり、そもそもその違いを意識していなかったりで、結果今までとあまり違いのないものや好みで決定して進行してしまいます(費用やスケジュールの兼ね合いもありますので…)。

Webディレクターとしてプロジェクトの円滑な進行はもちろん、お客様の売り上げに貢献したく、少しでもサービスをいい方向に改善するために今一度「定量調査」と「定性調査」をおさらいして、定量的な視点と定性的な視点を使い分けれるように意識したいと思います。

「定量調査」と「定性調査」の違い

「定量調査」や「定性調査」のワードで検索するとその「違い」という見出しのページがいくつかヒットします。需要があるのでしょうか。他サイトを見てもらえば詳しく理解いただけますが、ざっくり解説。

「定量調査」とは?

数字を集めて、統計学的に分析します。例えば下記のようなものが該当します。

  • アンケート
  • ネットリサーチ
  • 街頭調査

Webではおなじみの「Google アナリティクス」が該当します。

「定性調査」とは?

調査対象者の思考、生の声、行動など数値化できない情報を収集して分析します。例えば下記のようなものが該当します。

  • フィールドワーク
  • オブザベーション
  • デプスインタビュー

Webでは「ユーザビリティテスト」なら経験された方も多いのではないでしょうか。

Web制作者にとって「定性調査」は聞き慣れないものが多い

フィールドワーク…?オブザベーション…??デプスインタビュー…???

ICTやIoT、AIは聞いたことがあっても、上記はピンときていないWeb制作者の皆様。そう、そこです。Web制作はコードを書いてサーバーにアップしてそれをブラウザを通して閲覧するという性質上、「定性調査」が抜けがちなんです。

ちなみに

  • フィールドワーク
    (現場に訪れ、観察・聞き取りを行う。例えば飲食店の調査であれば、実際に店舗を訪れて、注文している会話を聞いたり、食べている人の表情を見るなど。)
  • オブザベーション
    (行動観察。行動や発話を記録する。例えば新商品開発の調査であれば、目の前で商品を使ってもらいながら、なるべく行動や気持ちを発言してもらい、それをメモしていく。)
  • デプスインタビュー
    (潜在的な声を聞く。例えばインタビューされている人に「それはどうして?」と問い、行動や考えを深堀してもらう。)

ざっくりとこんな感じです。

「そもそも定性調査が抜けがちなのは、必要性がないからなのでは?」「アナリティクスとか、数字の方が信用できる!」と思うかもしれません。

そんなことはありません。定性調査には数字に現れない大きなメリットがあります。

定性調査でわかる、ユーザーのコンテクスト

定性調査で見えてくる最も重要なことの一つに、「調査対象者のコンテクスト」があります。

コンテクストは日本語で「文脈」と訳されることが多いですが、この文章では「コンテクスト=なぜそうしたか」と考えてもらうとわかりやすいです。

例えば画面設計(UIデザイン)のフェーズにおいて、よくあるやりとり。「このバナーは押してほしいから、派手にしてください。」派手にすれば押してもらえるのでしょうか。正解かもしれませんし、場合によっては不正解かもしれません。
運用のフェーズにおいてABテスト(定量調査)をして確認することももちろん可能です。しかし、ABテストでは「どちらが多く押されてた」という結果は得られても「なぜ押された」という理由がわかりません。

ここで定性調査、例えばオブザベーション(行動観察)をしたとします。
調査対象者から「このページの内容が好きです。このバナーは関連している内容なので押してみます。」という発話が得られたとします。
また別の対象者から「このバナーは派手ですね、広告でしょうか。邪魔ですね。」という発話が得られたとします。

この調査の結果から「好きな内容のページに関連しているバナーだから押した」や「派手なバナーから広告を想起した」というコンテクストが得られました。

アンケートと何が違うの?

アンケートは最終的に数字にしないといけないので、「1〜5のどれが好きか」など、選択式の質問となってしまい「どのように感じた?」「なぜそれが好きか?」の回答を得ることは難しいです。

その点、定性調査では調査中・調査後に「このボタンを押したのはなぜ?」「この3つからこれを選択したのはどのような考えから?」と潜在的な声を集めることができます。

定量調査で集まったデータは数字で表すことのできる「量的データ」と呼ばれ、定性調査で集まったデータは数字で表すことができない「質的データ」と呼ばれます。

質的データから見る、ユーザーのインサイト

「好き」「嫌い」のアンケート結果の数字から、それが「良かった」「悪かった」の判断はつきますが、「なぜ良かった」「なぜ悪かった」の判断はつきません。この「なぜ」のところに「インサイト(潜在的なニーズ)」が隠されています。

先ほどのバナーの例では次のようなコンテクストが得られました。
なぜバナーを押したか?→好きなページの内容に関連していたから
なぜバナーを押さなかったか?→広告だと思ったから

ここから、「好きなページに関連したものはもっと読みたい」「広告は拒否している」というインサイトが見て取れます。画面設計としては「ページの内容と関連があることが伝わる位置に、広告のように見えないあしらいでバナーを配置する」ということになると思います。

「なぜ」要は「問い」を持って見ようとすることでインサイトに注目し、調査対象の「モノ(この場合バナーやそのあしらい)」ではなく調査対象の「コト(この場合押した理由、押さなかった理由)」を見ることとなり、突き詰めれば行動の「本質」が見えてきます。

質的データ 調査対象者の最大公約数としてのインサイト(潜在的なニーズ) 行動の本質に注目

このように質的データを集めることで、調査対象者の「最大公約数としてのインサイト」を発見することができ、ひいては行動の本質に迫ることができます。

調査手法を正しく使い分ける

「定量調査より定性調査の方が役に立ちそう!」と思ってしまいそうですが、そういうことではありません。そもそも得られるデータの活用方法の目的が違います。
また数字には圧倒的な説得力があり、提案の場でも話が通しやすかったり、理解を得られやすいなどの実情もあります。その時々による取捨選択と調査の組み合わせが重要です。
「何の目的か」「ユーザーの何を知りたいか」によって当然、調査手法が変わります。

潜在レベル 隠れているニーズを発見したい 顕在レベル 仮説を検証したい 定量調査 数字を集めて統計学的に分析 ・データマイニング ・アイトラッキング分析 ・ビッグデータ分析 ・アンケート ・グループインタビュー ・A/Bテスト 定性調査 調査対象者の思考、生の声、行動など数値化できない情報を収集して分析 ・フィールドワーク ・オブザベーション ・デプスインタビュー ・ユーザビリティテスト ・エキスパートレビュー ・行動マッピング
  • 潜在レベル(隠れているニーズを発見したい)
  • 顕在レベル(仮説を検証したい)

上記と定量調査、定性調査の組み合わせから調査手法を選択していきます。

例えば「会社の実績としてアプリを作ってみたいから、自社サービスとして何か作ってみよう」となったとします。この時、担当者は友人に「どんなアプリがあったら使う?」など聞いてみるかもしれません。これは「潜在レベル×定性調査」であり、「なぜ、どうして」を詳しく掘り下げていくことでその友人のコンテクストからインサイトが見えて、サービスデザインのとっかかりが見えてくるかもしれません。


何か新しいお仕事の依頼を頂いた際、プロジェクトの最初に「調査」の期間が設定されるのが理想ですが、予算が限られている、先に公開日が決まっているなど、費用やスケジュールを割り当てることが難しいのも事実ではあります。しかし、抜けがちな定性的視点は、例えば社内でプロジェクトに関係のないスタッフにインタビューしてみる、守秘義務の範囲内で家族や友人にインタビューしてみる、などで補うことにより、解決の糸口が見つかることがあるかもしれません。
また定量・定性を普段から意識することで、ミーティングの場における視点や発言、「UX的にどうなん?」の回答も変わってくるかと思います。

お客様と頻繁にミーティングされるディレクターはもちろん、デザイナーが画面を設計する時、エンジニアが細かい部分の仕様に困った時、あらゆる場面で応用できると思います。

【余談】定性調査から作る、UX

先日テレビで「分数ものさし」なるものが紹介されていました。発案者は小学5年生の男の子。分数に苦手意識があり、友人も同じ悩みを抱えていたことがきっかけなんだそう。これも立派なUX。

気心知れた友人のコンテクストを理解し、インサイトにぴったり当てはまるサービスデザインを考えた小学生の男の子、そしてなによりこれを商品化した企業、すごいなあ(ちなみに出版社は「PRESIDENT」)。

参考

「定量調査」と「定性調査」の違いを理解して、アンケートやユーザーインタビューの成果を最大化しよう! | Web担当者Forum

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